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2025.07.28

近年注目のリチウムイオン電池の貯蔵を解説!倉庫を建てる際の注意点

こんにちは!北海道〜東北の倉庫・工場の建設会社「戦略倉庫」の久保です。

 

近年、電気自動車の普及や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、リチウムイオン電池の需要が急速に高まっています。

 

その一方で、貯蔵にあたっては法令上の規制や安全対策が不可欠です。

2023年12月には、関連する消防法の重要な改正も実施されました。

 

今回は、リチウムイオン電池貯蔵に関する最新の法改正内容から、危険物倉庫としての分類、そして実際に倉庫を建設する際の注意点まで詳しく解説いたします。

 

リチウムイオン電池の貯蔵倉庫建設をご検討の企業様にとって、安全で法令に適合した施設を建設するための重要な情報をお届けします。

 

※2025年6月時点の情報です。

リチウムイオン電池

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ここに目次が入ります

 

 

リチウムイオン電池貯蔵に関する法改正から確認!

リチウムイオン電池は、2050年カーボンニュートラル実現のカギとして大きな注目を集めています。

 

電気自動車の普及拡大や定置型蓄電池の導入促進により、その市場規模は急速に成長しており、国内でもリチウムイオン電池の生産能力の拡大が急がれています。

 

こうした背景を受けて、2022年12月27日に消防法に基づく「危険物の規制に関する政令」が改正され、リチウムイオン電池の保管規制が見直されました。

これは、産業界からの規制緩和要望に応える形で実現したものです。

 

法改正の主な内容

※2025年6月時点の情報です。

これまでリチウムイオン蓄電池を危険物として保管する場合、貯蔵施設には原則、以下のような制限がありました。

 

  • 平屋建て限定
  • 床面積1,000㎡以下
  • 軒高6m未満

 

これは、一般的な危険物の屋内貯蔵所の構造要件で、危険物を安全に保管するために設けられているものです。

 

しかし、今回の政令改正により、リチウムイオン蓄電池専用の貯蔵所については、高性能な開放型スプリンクラー等の消火設備を設けることを条件に、複数階建ての建物や、1,000㎡超の倉庫での保管も可能となりました。

 

また、蓄電池の充電率60%以下の維持、水が浸透する素材での包装など、安全確保のための新たな技術基準も導入されています。

 

この見直しにより、リチウムイオン電池の大規模かつ効率的な保管が可能になったのです。

 

法改正が行われた理由

この法改正が行われた背景には、リチウムイオン電池市場の急速な拡大があります。

 

従来の規制では、一つの倉庫で保管できるリチウムイオン電池の量が限られており、貯蔵・物流コストの高額化が課題となっていました。

 

産業界からは「大規模な貯蔵所の建設が困難」という声が上がっており、カーボンニュートラル実現に向けたリチウムイオン電池の普及拡大の足かせとなることが懸念されていました。

 

そこで、安全性を確保しながらも効率的な保管を可能にする規制緩和が実現したのです。

 

 

リチウムイオン電池の保管倉庫についても解説

リチウムイオン電池の貯蔵を検討する際、まず理解しておくべきは危険物としてのリチウムイオン電池の分類です。

 

リチウムイオン電池内の電解液は引火点が40℃程度の非水溶性引火性液体で、消防法において第四類第二石油類に該当する危険物です。

 

第四類第二石油類の指定数量は1,000Lと規定されており、指定数量以上の危険物は危険物倉庫での保管が義務付けられています。

 

危険物倉庫とは、消防法で定められた技術基準を満たした専用の保管施設のこと。

建設や運用には、耐火構造の建物であることはもちろん、適切な消火設備の設置や保有空地の確保など、厳格な要件を満たさなくてはいけません。

 

また、保管量が指定数量未満でも、指定数量の5分の1以上(第四類第二石油類では200L以上)の場合は、少量危険物として消防署への届出が求められます。

 

仮に届出対象外の数量(指定数量の5分の1未満)であっても、将来的な取扱量の増加を見越して、事前に消防に相談されることをおすすめします。

 

危険物倉庫の基本的な仕組みや建設基準、指定数量の詳細や計算方法については下記コラムで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

危険物倉庫とは?消防法で定められた建設をする際の基準もご紹介

危険物倉庫の指定数量とは?消防法と建てる際の注意点も解説

 

 

リチウムイオン電池の保管倉庫を建てる際の注意点も確認!

リチウムイオン電池の貯蔵

リチウムイオン電池の保管倉庫の建設では、電池の性質に応じた特別な配慮が必要です。

電池の特性を理解し、適切な環境を整備することで、安全で効率的な保管を実現できます。

 

倉庫内の温度管理を徹底する

リチウムイオン電池は複数の小さな電池を組み合わせた「組電池」として使用されることが多く、環境温度の変化により各電池の自己放電量に差が生じます。

 

この差が大きくなると一部の電池が過放電状態となり、発煙や発火のリスクが高まるため、年間を通じて一定の温度を保つ定温管理システムの導入が推奨されます。

 

また、重要な安全対策として充電率を60%以下に管理することも求められます。

 

指定数量以上の危険物の保管基準をクリアする

指定数量以上のリチウムイオン電池を保管する場合、より厳格な安全対策が求められます。

貯蔵庫は、要件を満たした危険物倉庫として建物の耐火構造化、適切な消火設備の設置、保有空地の確保、万が一の爆発時に被害を抑えるための放爆構造の採用など、総合的な安全対策が求められます。

 

これらの基準を満たすためには、まず適切な立地選定が重要となりますが、危険物倉庫は建設できる用途地域に制限があるため、計画段階での確認が欠かせません。

 

危険物倉庫を建てることができる用途地域は?土地の制限も確認」では、立地選定時の注意点を詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

 

また、放爆構造については「危険物倉庫の放爆仕様(放爆構造)とは?必要な火災・防爆対策を解説!」で、具体的な設計要件や効果について詳しく説明しています。

 

将来の法改正に対応できる設計にする

リチウムイオン電池を取り巻く技術や市場環境は急速に変化しており、今後も関連法令の見直しが予想されます。

 

2024年には耐火性収納箱を用いた保管方法の新たな指針も示されており、規制環境は継続的に進化しています。

 

倉庫建設時には、現行法令への適合はもちろん、最新の技術動向や規制情報を常にチェックし、適切な運用を継続することが求められます。

 

 

リチウムイオン電池の保管倉庫は安全対策を講じて建設!

リチウムイオン電池の貯蔵倉庫は、2023年12月の法改正により大規模化が可能となりましたが、その分、高度な安全対策が求められます。

 

温度管理システムの導入、適切な消火設備の設置、そして将来の法改正を見据えた柔軟な設計が成功の鍵となります。

 

危険物倉庫としての基本要件を満たしつつ、リチウムイオン電池特有の特性に配慮した専門的な知識が不可欠です。

 

安全で効率的なリチウムイオン電池倉庫の実現には、豊富な経験と最新の技術知識を持つ建設会社との連携が重要になります。

 

戦略倉庫では、約1,000通りのシミュレーションから最適なプランをご提案することで、低コストで高品質な倉庫や工場を短納期で建築可能です。

倉庫・工場の建築をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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久保 大輔設計部 部長

某設計事務所にて設計監理業務に従事し、現在は内池建設にて倉庫建築をはじめ様々な建築設計に取り組んでいる毎日です。建築を楽しみながら、安心で快適、使いやすく、みんなに愛される建築を提供していきたいと思います。

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